ダブルクロス:リミットエフェクト

 リミットエフェクトのあれこれ。

基本情報

  • 『エフェクトアーカイブ』で初登場。その他、『ヒューマンリレーション』『バッドシティ』に収録されている。
  • 「前提条件」となるエフェクトが指定されており、それを「取得可能な最大レベル」まで取得していなければならない。最大レベルが5なら、クロスブリードは5、ピュアブリードは7、トライブリードは4まで取得した後、リミットエフェクトを取得できる。
  • 他のエフェクト、アイテムの効果でコピーできない。Dロイスでも対象外になっている(はず)。

テクニック

  • 基本情報にもあるとおり、エフェクトを最大レベルまで取得できないトライブリードにとってある種メリットとなるギミックである。
  • 変わったところでは『ディスカラードレルム』のアカデミアステージで取得できる「CランクI」で最大レベルを下げることで必要経験点をケチることができたりする。

《原初の●●》で取得したエフェクトで「前提条件」を満たせるか?

 満たせるコピーしたエフェクトと、元のエフェクトは同名のエフェクトとして扱う(EA p.16)というルールが存在する以上、少なくとも読解の上では、できない理由がない。
 例えば、《原初の赤:アームズリンク》を最大まで取得していれば《ライトニングリンク》を取得できる。リミットエフェクトのコピーはできないので結局はコピー元のシンドロームを含むクロスないしトライブリードである必要があり、通常は意味がない。しかし例えば2種以上のシンドロームのエフェクトを組み合わせる必要がある「混沌なる者の槍(HR p.86)」「奇跡の血」の条件を満たしたい場合やウロボロスのエフェクトであることを参照する《螺旋の悪魔》《背徳の理》を使いたい場合などに有効なテクニックである。

Dロイスで取得したエフェクトで「前提条件」を満たしたい場合、どうなる?

 自身のブリードが何であれ、エフェクトの元々の最大レベルが前提条件となる
 こういう話があった。ピュアモルフェウスが「祈りの造花(RW p.55)」で《インフィニティウェポン》を取得した場合、《咎人の剣》の前提条件はどうなるか。追加で10点払う?それとも「祈りの造花」に成長に関するテキストがないため条件が満たせない?などの憶測が飛び交ったが、遺産継承者専用アイテム部分のテキストに答えが書かれていた。

(前略)また、エフェクトを取得できる場合、そのエフェクトの「最大レベル」はブリードによる修正を受けない。

 はい。そもそも5から上げられませんね。「デモンズシード」とかで無理やり最大レベルを上げた場合に成長させられるかは不明。たぶん無理かな。
 これにより、「祈りの造花」で取得した《インフィニティウェポン》は最大レベルが「5」になり、「取得可能な最大レベル」の条件を満たしているため《咎人の剣》は追加で1点も支払うことなく取得できるわけである。

 このルールを応用すると、ピュアブリードで前提条件エフェクトをLV7まで取りたくない場合などに、わざわざ自身のシンドロームのエフェクトを「蛇王の外套」とか「イフリートの腕」とかで取得することで最大レベル分の経験点をケチることが可能になる。ピュアサラマンダーの「イフリートの腕」で《炎の刃》を取得、最大レベルは5で済むが《アマテラス》はLV5まで上げられる、みたいな。

ダブルクロスにおける誤植+α

 ダブルクロスの公式ルールブック及びサプリメントにおける誤植について解説する。なお一部の誤植については公式でエラッタが出ているので、ここでは「公式にエラッタが出ていない誤植その他」について書く。
 執筆時点でざっと思い浮かんだものだけ書いているのでその都度更新。ネタがあればコメントかツイでリプライください。
 なお修正については他の類例に基づいた憶測として書いている。正式な回答があったわけではないので注意。

公式のエラッタはこちら → http://www.fear.co.jp/dbx3rd/support/edc3_170419.txt

誤植(ルールに影響のあるもの)

ヒューマンリレーション p.39 リレーションアイテム「天の火」
  • 誤 技能:<機械工学>
  • 正 技能:<知識:機械工学>

 そんな技能はない。「レーザーライフル」(PE p. 39)使用条件に「知識:機械工学」とあるため、それに合わせるのが妥当か。なお類例で言うと、同じくPE収録の「スカイキッド」(PE p. 40)で攻撃するための技能が<知識:機械操作>である。

バッドシティ p.55 DawnSeekersエンブレム「特攻」
  • 誤 行動値に+20する。
  • 正 そのラウンドの間、行動値に+20する。

 行動値増加の終了タイミングが書かれていない。全く同じ誤植が『ヒューマンリレーション』の「EXパスファインダー」にもあったがそちらは公式でエラッタ済み。ちなみに誤植というほどでもないが、行動値でなく【行動値】が正式な表記。

  • 2019.03.27 バッドシティ関連の公式エラッタが発表されたが、修正はされていない
  • 2020.11.09 公式でエラッタが発表された。
バッドシティ p.60 《報復の牙》

 複数を対象にした攻撃に対して使用する場合、どのように挙動するかが明記されていない。ただダブルクロス文法としてどう書くのが適切なのかもわからないので何も書いていない今の状態が正なのかもしれない。日本語として解釈するなら《孤独の魔眼》相当の「『対象:単体』とし、あなたひとりに変更」とするのが自然か。

バッドシティ p.64 《即席武器》 エラッタ済み
  • 誤 <射撃>で組み合わせた場合は「射程:20m」となる。
  • 正 <射撃>で組み合わせた場合は射撃攻撃で「射程:20m」となる。

 攻撃方法が書かれていない(<白兵>で組み合わせた場合のところには書いてある)。白兵攻撃でも射撃攻撃でもない攻撃は存在しないので、これは明らかに誤り。実際には射撃攻撃として処理するのがいいだろう。

バッドシティ p.68《創生の王笏》
  • 誤 前提条件:《再生の王笏》
  • 正 前提条件:《再生の王

 そんなエフェクトはない。額面通り受け取る場合、永遠に取得できないリミットエフェクトとなる。

誤植(ルールに影響のないもの)

リンケージマインド p.127 Eロイス「目覚める魂」
  • 誤 効果:あなたの衝動が他者に伝播し、それによって人々の破壊衝動が強まることを表わすDロイス。
  • 正 効果:あなたの衝動が他者に伝播し、それによって人々の破壊衝動が強まることを表わすEロイス

 単なるフレーバーなので影響はない。

日本語として正しいが、ルール上明らかに問題があり、誤植と推測されるもの

リンケージマインド p.104 Dロイス「遺産所持」/ヒューマンリレーション p.116 Dロイス「発明品」
  • 誤 あなたは、必要な常備化ポイントが50以下のアイテムを、常備化ポイントを消費せずに常備化できる。
  • 正 あなたは、必要な常備化ポイントが50以下のアイテムをひとつ、常備化ポイントを消費せずに常備化できる。

 どう考えてもおかしいので誤植とするのが妥当。公式の問い合わせフォームから申し入れをしてみた*1けど特に改善はされませんでした。
 「発明品」は「遺産所持」の互換で当該箇所のテキストも同じ。コピペと思われる。「遺産所持」の真上に「ひとつ」取得と書いてある「真実を知る者」が記載されているというのにこのざまである。

誤植か?(ルール上の問題はないが、テンプレートを外れている等の違和感があるもの)

ルールブック1 p.106/エフェクトアーカイブ p.32 《ダークマター

 互換エフェクトである《主の恩恵》(EA p.22)や《雷の加護》(EA p.37)と違い、「あなたが行う」の一文がない。まあ「対象:自身」なのでルール上の問題はないだろうが。

パブリックエネミー p.99 ストーリーパターンテンプレート:ダブルクロスを追え
  • 誤 ◆[協力者]の奇妙な行動
  • 正 ◆[ライバル]の奇妙な行動

 チャートのタイトル間違い。イベントチャート表ではちゃんとライバルになっているのにその表の方が間違っている。このままでは協力者が協力者を殴るあまりにも奇妙な展開になってしまう。
 なおこのシナリオは2ndの『ラディカルドライブ』からの移植であり、内容もほぼ同じである。2ndの頃はちゃんと「ライバルの」と書いてあったのにコンバートに際して変わったのはつまり……コピペではない、のか?

レネゲイズアージ p.87 「オーヴァード泳法」

 解説文が「オーヴァードダッシュ」のものになっている。

エフェクトアーカイブ p.68 《骨の剣》

 読み仮名が違う。『基本ルールブック1』では骨の剣(つるぎ)、『エフェクトアーカイブ』では骨の剣(けん)となっている。

エフェクトアーカイブ p.107 《絶対冷度》

 一般的には「絶対度」。誤植でなく造語の可能性もあるが。
 

レネゲイズアージ p.20 《贄探す雷獣》
  • 最大レベル:1

 効果がレベル参照なのに最大レベルが1のエフェクトもなくはない*2ので誤植とするのは早計だが、そもそも『レネゲイズアージ』は非常に誤植が多いサプリメントで、LV参照するのに最大1だったり、逆にLVに左右されないのに最大3だったりするエフェクトがいくつも収録されていてエラッタ祭りが開催されていた。
 そんな中、《ストライクミラージュ》も《爆雷撃》も《ヴァイタルボルト》も修正されたのに修正されずに残ったエフェクト、それが《贄探す雷獣》である。ブラックドッグのエフェクトの誤植多くね?*3

バッドシティ収録エフェクト全般 エラッタ済み

 『バッドシティ』では各シンドロームにそれぞれ6つずつエフェクトが追加されている。うちページの右下にあるエフェクトがどう見てもイージーエフェクトなのだが、イージーエフェクトであるという記述がどこにもない。同じページレイアウトの『レネゲイドウォー』にはしっかりとイージーの文字があるので、推定誤植。今のところただの重いフレーバーエフェクトとして使うしかない。

バッドシティ p.56 《デスストーカー》 エラッタ済み

 「タイミング:常時」のエフェクトだが「このエフェクトは侵蝕率でレベルアップしない」の文字がない。同じく『バッドシティ』収録の《武芸の達人》(p.64)にはその旨が書かれているので方針変更ではなく単なる誤植と思われる。ただしレベルアップしても強くなるだけで特にルール上の齟齬は発生しないため、このまま運用しても特に問題はない。

バッドシティ p.57 《ヘヴィギャロップエラッタ済み
  • 組み合わせた判定のダイスを-[3-LV]個する。

 《伸縮腕》のように(最低0個)の文字がないので、LVが3を超えるとむしろダイスが増える。100%ボーナスとか、ピュアとか。

  • 2019.03.27 バッドシティ関連の公式エラッタが発表されたが、修正はされていない
  • 2019.09.26 公式でエラッタが発表された。
バッドシティ p.66 《ファイアドライブ》 エラッタ済み
  • 難易度:対決

 支援エフェクトなのに難易度が対決。味方がリアクションを放棄すればよいだけなので運用上は問題ないと思われるが、判定するたびに~系の効果を踏む可能性があったり、「難易度:自動成功」にしか組み合わせられないエフェクトが組み合わせられなかったり、逆に判定を要するエフェクト(《リミットブレイク》等)を組み合わせられたりする。

バッドシティ p.68 《巨人の影》

 エフェクトのLVを上げる効果に共通する「この時、LVの上限を超えてもよい。」の文言がない。額面通り受け取った場合、最大LVより2低くエフェクトのLVを2上げる目的でしか使えないことになり、実用性が著しく落ちるため、単なる書き忘れと思われる。

  • 2019.03.27 バッドシティ関連の公式エラッタが発表されたが、修正はされていない
  • 2020.11.09 公式でエラッタが発表された。

その他

エフェクトアーカイブ p.41 《雷神の鎚》/レネゲイドウォー p.56 遺産継承者専用アイテム「雷神の槌」

 名前が紛らわしい。似たような例で言うとDロイスの「天才」と《天才》など。

*1:商品の誤植等に関してはFEARの公式から問い合わせが可能。個別の返信はしないが、エラッタやFAQに反映される可能性はある、とある。

*2:《ヴァリアブルウェポン》が有名ですね。

*3:公式の書籍なのにブラックドックとか書かれていることもままある。

クラヤミクライン雑感

 クラヤミクライン。今年発売した冒険企画局TRPG。発売当初は結構界隈を賑わせていた感じがあったが、私個人としては既存のシステムで十分満足しており、またホラーがそんなに好きでもないのでスルーしていた。そんなシステムを何故だか遊び、しっかり楽しんだのでその雑感。

公式 クラヤミクライン 作品紹介ページ | 富士見書房公式 TRPG ONLINE

イントロ

「クラヤミクラインのテスト卓やります。サンプル使ってルールブックなくてもできるようにするよ」
kindle版あるやん」
「買った」

スムーズですね。

概要

 現代ホラー、というかオカルトをテーマにした作品。システムがめちゃくちゃにシンプル。基本的にシナリオが最初から「異空間からの脱出モノ」に限定されていて、自由度と引き換えに全体のテンポがかなりよい。判定も安心と信頼の%ロールである(1D10だけど)。
 クトゥルフと違う点としてはもうひとつ、PCは基本的にどこかしらまともではないという設定が最初から付いていて、何らかの異能をもって怪異に真っ向から立ち向かう、というのがある。取り込まれれば普通にロストするので注意が必要な点は変わらないが、いつ正気を失うかという恐怖に苛まれることはあまりなく、終始攻めの姿勢でいけるというのも展開のわかりやすさに貢献している。この辺はかなりダブルクロスに近いテイスト。
 キャラシート作成もライフパスと特性だけ選べば終わりだ。そういう意味ではTRPGの入門に多少向いているか。

感想

 とにかくインスタントに遊べる。そしてシステム部分の比重が少ないということは、その分の労力をフレーバーに回せるということでもある。テーマがテーマなのでかなりエモい展開にもできるぞ。
 逆に、クトゥルフのような重厚な世界設定・判定システムや、剣とか魔法を使ってドンパチこそがTRPG!という人には物足りないかもしれない。成長要素もかなり薄い*1

おまけ

 第1回(サンプルシナリオ)、第2回(オリジナル)ともに同じ面子でやったが、いろいろとすごかった。なんだったんだろう。

参考:
blog.livedoor.jp

*1:同じキャラを使い続けても他の新規キャラと差が開きづらいとも言える。

レネゲイドウォー収録「バトルトレーラー」

 先行研究がないかと何気なくtwitter検索をかけてみたらエラッタが出ていたことがわかってショックでした。

概要

 『レネゲイドウォー』収録の秘密兵器専用アイテムで、ヴィークル。マイナーアクションで変形し、私にいい考えがありそうな感じになる。他が「必要経験点:20」と書かれているところ「100」と書かれており、どういう意味なんだ、初期取得ならタダだから関係ないんじゃないのかと言われていたところ、発売後半年くらい経ってエラッタが発表され、大変残念なことになった。

P55 バトルトレーラー 解説
以下を追加
 このアイテムは経験点支払うことでしか取得できない。
(公式FAQ)

 日本語が怪しいぞ大丈夫か。まあつまるところ、秘密兵器の効果で自動取得するものとは別途経験点100点を支払わなければならないらしい。重い。

解説の検証

 謎の効果テキストも話題になった。

(略)また、その間、このヴィークルの攻撃力を<白兵>で使用できる。
RW p.55

 いかんせん前例のないテキストであり、公式エラッタやFAQもないが、合理的に解釈すれば以下のとおりとなる。

  • このヴィークルの攻撃力を使用して白兵攻撃を行う場合、指定された技能のほかに<白兵>を使用することができる(「技能:」欄に<白兵>を追加する)

 これは画期的だ。組み合わせることのできるエフェクトが少ないのがヴィークルの数少ない難点であり、この効果を使えば実質的に攻撃力20の白兵武器として起用できる。しかも武器ではないので《ギガンティックモード》で破壊されない。マイナーアクション消費の難点は《一閃》で解消できる。ほかにも色々と夢が広がる感じの効果だ。……経験点100を費やす価値があるかどうかは疑問だが。攻撃力20、装甲20とすると相場はせいぜい60~80がいいところじゃないか?

関連

 『レネゲイドウォー』収録の秘密兵器専用アイテムは通常ステージで使用できる、という結論が過去の記事で出ている。通常ステージでどうコンボイを使うかは不明だ。

ダブルクロス:その場で《縮地》ってできるの?

 ダブルクロス永遠の難題シリーズ。ハウスルールで禁止にしているところもあるみたいですね。

概要

 《バックスタブ》は《縮地》を使いさえすれば白兵攻撃に係数5の強力なバフが乗るエフェクト。リミットであることを差し引いてもその低燃費高火力は魅力。
 でも白兵攻撃なのだから、一度使ってしまえば同エンゲージに入っちゃって、次は使えないんじゃないの?

そもそも《縮地》のテキストが怪しい

 《バックスタブ》の適用条件は「《縮地》を使用したそのメインプロセスの間」なので、《縮地》さえ使用できれば移動如何に関わらず効果が適用されるとしてよいだろう。より具体的に言うなら「マイナーアクションか、メジャーアクションで移動を宣言し、その際に《縮地》を使用したメインプロセスの間」。《ファンアウト》などでセットアッププロセスに移動しても《縮地》は使えるがメインプロセスではないので《バックスタブ》が適用されない。
 ではエンゲージした状態で縮地が使えるか。テキストを確認してみよう。

 あなたが戦闘移動、または全力移動を行なう直前に使用する。その移動では、シーンの任意の場所に移動できる。この移動では離脱を行なえる。
(『エフェクトアーカイブ』p.98)

 最後の一文がキモである。「この移動では離脱を行なえる」。すなわち、同一エンゲージからの離脱が可能であると明言されている。これがどういうことかというと、敵とエンゲージしていて、全力移動でなければ離脱ができないような状況にあっても、戦闘移動を宣言すること自体は可能ということになる(移動を試みなければそもそも《縮地》を使用できないため)。「移動とエンゲージ」(R1 p.237)の項を読んでも移動の細かい手順は一切不明だが、移動宣言と移動の実行は区別されていて、その間に《縮地》が挟まるということだろう。つまるところ移動の宣言及び《縮地》の使用自体は可能

移動しないことができるか?

 次に「移動を宣言しながらその場にとどまることができるか?」という疑問があるが、これは公式FAQ《一閃》の項で説明されている。

Q:《一閃》のように移動を行なうエフェクトを使用した際、移動する距離を0mにすることはできますか?
A:可能です。ただし、移動の距離を0mにした場合、移動しなかったものとして扱います。
(公式FAQより)

 0m移動という概念が存在する。《縮地》の効果は「シーンの任意の場所に移動」なので、当然その場に移動することも可能だ。なお、ここでいう「移動しなかったものとして扱う」は、移動をトリガーとする《一陣の風》や《蹂躙する蹄》の効果を受けられないという意味であり、エフェクトの使用自体がなかったことになるわけではない。《バックスタブ》は移動をトリガーとするエフェクトではないので、至近で《縮地》を使用、かつ移動距離が0mであったとしても、文句なしに効果を受けられるとしてよいだろう。
 余談だがこの裁定は攻撃エフェクトの起点が《一閃》しかないハヌマーンに対する圧倒的な救済措置である。実際の卓では(移動ができないので)垂直方向に全力移動(=大ジャンプ)したという演出で攻撃した例があった。またマイナーアクションを消費せずとも《一閃》《縮地》でその場《バックスタブ》が可能であるということもわかる。
 その場バクスタ。一瞬で敵の後ろに回り込むみたいな演出と考えればフレーバー的にもそこまで不自然じゃないし、ゲームバランス崩壊ってほどでもないと思うし、いいんじゃないですかね。

その他

 移動ができない状態でも移動を宣言できるなら、バッドステータスの硬直を受けていても移動ができないだけで《縮地》を使用できるのでは?という説が如実に浮かんできたが、これは不可とするのがよいだろう。「移動距離を0mにする」は効果を適用しているが、「そもそも移動ができない」は効果を適用できない。実際に移動が発生しないため《縮地》の使用自体ができないとするほうが自然である。結果的に移動がなかったことになるのと、移動ができないのとでは違うということだ。

ダブルクロス:【同乗状態】がよくわからないんだけど?

はい、その通りです。

カッティングエッジ』で同乗状態を参照するエフェクト《破壊の戦車》がいきなり登場し世のヴィークラーたちを困惑の渦に叩き込んだことは記憶に新しいですね。でも同乗状態って何?

ヴィークルとは

 ヴィークルはアイテムの種類のひとつ。れっきとした攻撃手段であるにも関わらず『ルールブック1』(以下「R1」)では「スポットルール(p.259-)」という「戦闘の際に問題になりそうな細かいシチュエーション」とかいうコーナーに追いやられてしまっている。細かいシチュエーションも何も基本ルールやろがい。
 そもそも情報量が少ない。先述のコーナーにおいては、同乗状態も含め261-262ページの実に1.4ページ分くらいの情報しかない。公式FAQでも数件ある程度である。その数少ない基本情報をまとめてみよう。

  • 「ヴィークル」という種類のアイテム。武器や防具ではないが、搭乗することでステータスに各種補正がかかるほか、設定されている攻撃力を適用し武器として扱い攻撃を行うことができる。
  • ひとりのキャラクターはひとつのヴィークルにしか搭乗できない。バイクに乗ったまま電車に乗るとかはできない。
  • ヴィークルを所持している状態で搭乗を宣言すると、搭乗状態となる。搭乗の宣言及び搭乗状態の解除にはマイナーアクションを使用する。ただし「原初の混沌」等の効果で戦闘中にヴィークルを取得した場合には、即座に搭乗状態となることができる。(公式FAQ)。
  • ヴィークルを使用した攻撃は白兵攻撃となる。「白兵攻撃と射撃攻撃は組み合わせられない」ため、「リニアヴィークル」のようにRCで運転できるヴィークルであっても《雷の槍》のようなエフェクトと組み合わせることはできない(公式FAQ)。
  • 武器と違い射程の設定がない。同ページには「同じエンゲージにいるキャラクターに対して行なえ」とあり、つまるところ普通に使えば「射程:至近」になると言いたいのであろうが、この文章を厳密に適用するといかなる手段を用いても同一エンゲージ以外に攻撃が行えないことになってしまう。あまりないケースだが《影絵の兵士》や《タブレット》を使いたい場合には予めGMとのすり合わせが必要であろう。

同乗状態

 ただでさえ情報量の少ないヴィークル関連ルールにあってさらにアレなのが同乗状態である。要は相乗りするという話なのであるが。

同乗状態となっているキャラクターは一切の移動が行えなくなり、搭乗状態のキャラクターが移動すると自動的に同乗状態のキャラクターも共に移動する。
R1 p.261

 一文で矛盾している。たぶん“能動的に”移動が行えないということを言いたいのだと思う。《吹き飛ばし》とか食らった際に同乗者だけ吹き飛ぶかは微妙なところ。
 そのほか「何人まで同乗状態になれるかはGM判断」とか細部が丸投げだし、搭乗状態でない以上はヴィークルの装甲も何も適用されないし、「チェーンガン」のように搭乗状態を要求するアイテムも使用できない*1。どこに乗ってるんだ。ボンネットか?
 なお搭乗と同じく、同乗するにもマイナーアクションが必要。搭乗のルールにあった「取得時に即座に乗れる」システムが適用されるかは……どうだろうな……。

活用法

 同乗すると搭乗者と同乗者が常に同一エンゲージで移動することになる。同乗者が《ファンアウト》を使用し搭乗者を移動させると、ふつうは自身に使用できないところが便乗して動けるという謎の面白テクニックがある。そのほか、カバーを行う白兵キャラがカバー対象を同乗させて移動することにより、行動値によるエンゲージ分断を避けることができる。
 搭乗はひとりにつきひとつしかできないが、ひとりにつきひとつにしか同乗できないとは書かれていない。よって、搭乗状態のまま他人のヴィークルに同乗することが可能である。行動値に激烈なマイナス修正がかかる「スチールギガント」に搭乗したPCを「FHブレードバイク」で悠々と運んだりできるかもしれない。

移動制限と同乗状態

 ヴィークルによっては搭乗している間飛行状態になれるものがあるが、上記のルールを鑑みるに、同乗者には適用されない(引きずられているのか?)。搭乗者が移動した際に地上にいるエネミーのエンゲージを横切った場合やエンゲージを離脱したい場合、同乗者が引きずりおろされるか否か。また、同乗者が硬直のバッドステータスを受けている場合、搭乗者に追随しての移動は可能か。
 ダブルクロスに限らず、多くのゲームにおいて「できる/する」と「できない」がぶつかったとき、一般に「できない」が優先される。この場合、いかなる状況においても同乗者は搭乗者と一緒に移動するとは定義されていないため、一見すると「移動できない」ように思える。
 そこで、そもそも移動とは何かを考えてみよう。「移動とエンゲージ(R1 p.237)」の項にはこうある。

移動方法にはマイナーアクションを使う[戦闘移動]と、メジャーアクションを使う[全力移動]の二種類が存在する。

 これは明らかな情報の欠落で、戦闘移動でも全力移動でもない移動は存在する。するとどうだろう。本項で説明されているのがこの2種のみである以上、ここにあるエンゲージの制限に関する記述もまた「戦闘移動」「全力移動」にしか適用されないと言えるのではないか。この仮説を踏まえて先ほどの同乗状態の文章を見ると、「一切の移動(=戦闘移動および全力移動)が行えなくなり……共に移動(=戦闘移動でも全力移動でもない)する」となり矛盾がなくなる。公式FAQにも「《妖の招き》による移動は離脱でなく封鎖の影響も受けない」という記述があり、この説の正しさを補強してくれる*2
 よって、戦闘移動でも全力移動でもないヴィークルに付随した同乗状態での移動は、硬直やエンゲージの影響を受けない、というのが当面の結論である。

*1:公式FAQには「GMが認めれば可」とある。

*2:その割には《斥力の鎚》のテキストに「離脱を行なえる」とか書いてあるけども。