※旧ブログの記事を加筆・修正してサルベージしたものです。
「なぜ初心者にサンプルキャラをすすめるのか?」のまとめ。
おさらい
- クイックスタート:基礎データがすでに完成しているキャラクターに、名前やこれまでの人生経験といった設定を付与していく。完成済みのプラモに色を塗ったりウェザリングしたりする感じ。
- コンストラクション:能力値、技能、エフェクトをそれぞれ決められた方法で選択する。色々なパーツが並んでいるので、そこから自分で選んで組み上げる感じ。
- フルスクラッチ:与えられた経験点を、それぞれのルールに従って配分する。パーツから自分で削り出す感じ。どのレベルで作るの?パーツから?
後に詳しく説明するが、サンプルキャラはとにかく「ちゃんと動かせる」ようにできている。これが大きなポイント。
「クイックスタート」という単語から受ける印象
クイックスタートを薦めると、「もうあるキャラを使うだけじゃん。つまらないし、愛着もわかない」みたいな反応が帰ってくる場合がある。わからないでもない。特に、他のシステムを経験済みだったり、あるいはもともとゲーマー気質が強ければ強いほど、いちから自分でキャラを作りたくなる傾向がある。かくいう私もそうでした。それに「とりあえずサンプルキャラ使っとけ」みたいな薦め方は、意図するとしないとに関わらず、なんとなく突き放したような、冷たい印象を受けなくもない。
また、「何もわからないままとりあえずプレイする」という行為にストレスを感じる人もいると思う*1。とことんまで理解してからプレイした方がいいといえば、それはもちろんそうである。
システム自体のハードル
しかしながら、ことダブルクロスというシステムに関して言えば、いかんせんキャラ作成に要する前提のノウハウが多い。能力値にどういう感じで振ればいいか、エフェクトはどう選ぶとどう作用するのかについての感覚を、ルールブックを一読しただけで身に着けるのは非常に困難だ。クトゥルフの呼び声のようなシステムと違い、エフェクトの取得方法などが一定程度整っていない場合*2、端的にシナリオの進行に支障をきたすと言っても過言ではない。他のシステムでは役割分担なんかがあったりするが、ダブルクロスは全員戦闘要員が基本のシステムなので、戦闘が全くできなかったりすると本当にまずいのだ*3。
また、戦闘のみを抜き出しても、どの効果がどのように作用するかについて文字上から把握することは難しい。独特のバランスで成り立っているゲームなので、ガードや回復を他のシステムのノリで取得すると残念なことになりやすい。
かといって、じゃあイチから説明しながら作るとなると、まず憶えるということが最初にのしかかってきてしまうため、出鼻をくじかれかねない。「楽しい」の前に「つらい」が来るとつらいのだ。
まず楽しむということ
半端な知識でキャラを作った結果、半端なキャラができる。すると、戦闘や情報収集でつまづきがちであり、初めてのプレイが“うまくいかなかった”ことになってしまう。もちろん、失敗も経験であり、最初から完璧である必要などどこにもないが、敢えて厳しい結果を味わうより面白いところから入った方がいいに決まっている。
私は初心者にビルドを教えるときも基本的に強さを重視して教える。当然どんなキャラを作ってもいいわけで、自由な発想を否定するわけではないが、ゲームを楽しむためには、一定ラインの強さが確保されている必要があると考えるからだ。相手に5点しか与えられなかった場合と、20点与えることができた場合では爽快感も違ってくる。サンプルキャラクターはこの点、しっかり戦えて、かつ情報収集もこなせるように作られており、GMに従って動かすだけでこのゲームシステムの基礎を学ぶことができる。
それに骨組みが完成しているとはいえ、ここに名前や能力のイメージ、背景設定などを付けていくだけでも結構楽しいはずだ。むしろそれこそがTRPGの醍醐味のひとつと言ってもいい。かつて私が参加した上遠野卓もサンプルのみのセッションだったけど、かなりいい感じでした。