ダブルクロス:マスタールール仮説

前置き

 ダブルクロスにはおよそマスタールールと呼べるものがない。ルールブックに断片となって散らばっている記述の積み重ねと公式FAQによってのみ成り立っている。よって、例外が発生した場合に都度対応することとなり、きわめて効率が悪い。
 ここでは、既存の裁定と日本語上の解釈を組み合わせた「仮説」をまとめていく。本ブログにおけるルール解釈の根幹をなす部分である。

意味のないテキストはない(合理的解釈)

 「書いてあることを額面通り受け取ると存在意義がなくなってしまうテキスト」は何らかの例外的な措置又はルール上の処理に差異があるものである、とする考え。例えばヴィークルによる攻撃は武器攻撃として扱われるというルール(公式FAQ)があり、「スチールギガント」(PE p.40)は「搭乗している間、あなたが装備している武器は使用できない」とあるが、「スチールギガント」には攻撃力が設定されており、これによる攻撃を想定していないとは考えづらいため、「武器は使用できない」制限はあくまで攻撃宣言ステップにおける元々の武器にのみ作用する(=「スチールギガント」自身による攻撃は可能)とするのが妥当だろう、といったもの。
 推測するしかない部分の多いこのゲームにおいてこの考えは重要で、ことあるごとに頻出する。ルールさえしっかりしていればこんな当たり前のことをわざわざ書く必要もないのだが……。

効果はルールに優先する

 ゴールデンルールを除くルールとエフェクトの効果が矛盾する場合、あるいは装備の効果などが矛盾する場合、エフェクトの効果が優先されるものとする。
R1 p.250

 ルールに介入するエフェクトの効果を有効とするためのルール。例えば「離脱」は本来メジャーアクションを消費して行うものであるが、《ハンティングスタイル》(EA p.60)を使用すれば戦闘移動で離脱が可能となる。「できない」ルールより「できる」効果が勝る、とも言える。
 ちなみにルールブックのこの文章、ちょっと日本語がおかしくて「装備の効果などが矛盾する」がどこにかかっているのかよくわからない。「エフェクトの効果が優先」とあるので「エフェクトの効果と装備の効果などが矛盾する場合」と言いたいのかな。

例外?

 先の文章の4ページ後にこんな文章がある。

[対象:自身]のエフェクト
 エフェクトの中には、組み合わせたエフェクトの対象を拡大するものがある。だが、[対象:自身]のエフェクトはどんな効果をもってしてもその対象を拡大できないものとする。
R1 p.254

 ルールが効果を制限してるじゃん!しかも《吹雪の守護》(EA p.109)や《火の鳥の加護》(EA p.110)のように「対象:自身」を「対象:範囲(選択)」に変更するエフェクトは存在しているという始末。
 ……事実「対象:自身」を変更するエフェクトが存在してしまっている以上、双方が成り立つ理屈を考えざるを得ないのだが、ここで脳裡によぎるのは、悪名高きあの公式FAQ。

Q:《災厄の炎》に対して《孤独の魔眼》などのエフェクトで対象を変更することはできますか?
A:可能です。《災厄の炎》の「このエフェクトの対象、射程は変更できない」は、組み合わせによって変更されないという意味と考えてください。

 つまり「対象:自身」のエフェクトは、組み合わせによってその対象を変更することはできないが、オートアクションであれば可能、という整理である。先の文章もエフェクトの組み合わせの項にあったものであるし、《吹雪の守護》も《火の鳥の加護》も組み合わせているわけではないので一応両方の理屈が成立する。まあ、この理屈でいくと《タブレット》(EA p.115)《多重生成》(HR p.84)でソラリスの「対象:自身」のエフェクトを味方にばらまくことが可能ということになってしまうわけであるが……。

「できない」効果と「できる(する)」効果が干渉した場合、「できない」が優先する

 例えば、《災厄の炎》(EA p.106)に《スターダストレイン》(EA p.23)を組み合わせても「対象:シーン(選択)」に変更することはできない、といったもの。特にルールブックに記載のあるルールではなく、「これで変更が許される場合、テキストの意味がなくなってしまう」ことによる合理的解釈である。先の「効果はルールに優先する」とは力関係が異なる点に注意。

例外

 「『できない効果』をできるようにする効果」はこの例外である。例えば《黒星の門》(EA p.34)と《黒の鉄槌》(EA p.30)はいずれも「エフェクトの効果」であるが、ここで「できない」を優先すると「できるようにする効果」自体が意味のないものになってしまう。そのため「同じエンゲージにいるキャラクターを対象にできるようにする」効果は、上記のマスタールールによらず、「同じエンゲージに対して使用できない」効果に優先する。
 これについては「エフェクトの効果にもランクがあって、より上位の効果は下位の(=一般的な)エフェクトの効果に対して優先する」と考えることができる。

できない処理は行えない

 「白兵攻撃と射撃攻撃は組み合わせられない」「対象を単体から変更できない《さらなる力》(EA p.117)と対象を範囲(選択)から変更できない《災厄の炎》(EA p.106)は組み合わせられない」といった考え。公式に記述のある裁定で言うと「リニアヴィークル」と射撃攻撃のRCエフェクトは組み合わせられない(公式FAQ)などが該当する。

公式リプレイにおける判例は話半分に留める

 公式の文章に違いはないので裁定は是とするのが本来の在り方であるが、リプレイという性質上ルールミスがあっても普通に販売されるので、絶対的な根拠とはなりえない、というもの。他に矛盾する事例がなければ正しいとしてもよいとは思う。
 ルールミスの例としては、『タイムリゲイン』付属のリプレイにおいてブロウベルがエネミーとエンゲージした状態から《斥力跳躍》(EA p.31)で離脱し、即座に別のエネミーのいるエンゲージに侵入して白兵攻撃を行っている(p.32)が、これは不可能であると公式FAQに書いてある。

●飛行状態
Q:飛行状態のキャラクターが、飛行状態ではないキャラクターのいるエンゲージから離脱を行なった際、別のエンゲージに移動できますか?
A:できません。

 このリプレイ、バロール/モルフェウスのキャラクターが特に何の注釈もなくオルクスの《オーバーロード》(EA p.101)を取得していたりと突っ込み所は他にもあったりする。

備考

 その他、思いついたら追記していく。