ダブルクロス相対性理論

ダブルクロス相対性理論とは

 ダブルクロス相対性理論。『ダブルクロス The 3rd Edition』(以下「DX3」)におけるキャラクター作成には多くの要素が絡んでくるが、これらの強さはほとんどが相対的なものである、とする考え。例えば範囲攻撃を行うエフェクトを採用したとして、エネミーが複数体ひとつのエンゲージに固まっていなかった場合、役に立たない。装甲を無視するエフェクトは相手が装甲を持っていなければ役に立たない。
 そしてDX3というゲームでは、ほとんどの場合、キャラクター作成時にエネミーの情報が開示されることがない。つまり我々は誰と戦うかわからないまま有利不利を争うゲームにその身を投じているのである。
 この理論では、特定の効果を否定したり、弱いと決めつけたりはしない。ただあくまでそれらの機能は相対的なもので、役に立つかどうかの度合いがモノによって異なってくるということを改めて確認することとする。

主な比較

キャラクターの要素 比較対象 信頼度
攻撃力 エネミーのHP
判定ダイス/達成値 エネミーのリアクション、判定妨害の有無
【行動値】 エネミーの【行動値】 中~高
範囲攻撃 エネミーの数およびエンゲージ
複数体/シーン攻撃 エネミーの数 中+
装甲/ガード/ダメージ軽減 エネミーの攻撃力、攻撃対象、装甲無視/ガード不可の有無 低~中
ドッジ エネミーの攻撃対象、命中判定 低~中
反撃 エネミーの攻撃対象
判定妨害 エネミーの判定ダイス/達成値 低~中
装甲無視/ガード不可 エネミーの装甲/ガードの有無
バッドステータス付与 バッドステータス無効エフェクトの有無、他

 ここで言う「信頼度」は強さでなく「役に立つ機会の多さ」を筆者の独断でランク付けしたものである。「中~高」や「低~中」としているものは、それに経験値を多く費やせばそれなりに役立つ機会も増える、というような意味合い。

個別解説

攻撃力(信頼度:高)

 攻撃力が全く役に立たないという場面はほとんどない。例えばHPが10しかいないエネミーが複数出てくるとか、HP少ないけどめちゃくちゃ蘇生してくるとかだと流石に《プラズマカノン》(EA p.110)はいらなかったかなとかなるかもしれないが、シナリオの多くはHPの高いボスが存在する。高火力単体攻撃はDX3というゲームにおいて最も信頼できる要素のひとつと言っても過言ではなかろう。

判定ダイス/達成値(信頼度:高)

 判定ダイスの数と達成値を直接稼ぐのとは両方とも命中判定にかかる部分なのでひとくくりにした。先の「攻撃力」にも影響する部分であり、ダイス数や達成値を増やして無駄になるということはない。
 逆に軽視した場合のリスクとしては、敵がドッジしやすくなるとか、ダイス/達成値減少系の判定妨害を受けた際に命中しないという点などが挙げられる。このため「攻撃力」よりは相手に多少依存する。

【行動値】(信頼度:中~高)

 原理はいたってシンプルで、とにかくエネミーより早く動ければよい。経験点を振った上でエネミーより遅いと振った分がまるで無駄になる。相手が元々遅かった場合も同じ。つまりは目に見えないハードルを勘で飛ぶしかないというのがこの【行動値】の悩ましいところである。
 「中~高」としたのは、例えば《先陣の火》(EA p.107)をLV3で取得するとかすれば流石に先手を取れる機会も増えるだろうとかそういうレベルの話。仮想敵を決めるとかで調整できなくもないが……不毛である。

範囲攻撃(信頼度:中)

 エネミーがひとつのエンゲージに複数いないと役に立たない。この辺りからGMの癖とかシナリオの組み立て方とかとの兼ね合いになる。下に示す装甲とかと違って範囲攻撃は「持っていない状態でその状況に遭遇すると困る」「役に立った場合のリターンが大きい」ので、信頼度「中」ではあるものの、PTに1人いるとありがたいポジション。
 あと一応【行動値】にも依存する。相手が突っ込んでくる前に撃てるか、相手が動く前に始末できるかは大きい。

複数体/シーン攻撃(信頼度:中+)

 ほぼ同上。ただしエネミーのエンゲージ状況に依存しないので範囲攻撃よりは信頼度が高い(よって「中+」とした)。ボスひとりしか出てこないシナリオだと腐る。
 こちらも信頼性はともかく役に立った場合の役立ち度が非常に高い。複数体/シーン攻撃を行える効果自体も貴重なので、それだけでキャラクターのコンセプトにする価値がある。

装甲/ガード/ダメージ軽減(信頼度:低~中)

 全く攻撃してこないエネミーはそう多くないため、装甲やガードは常に一定の価値がある。ただしそれは自分を攻撃してくれる場合の話。単体攻撃が他のPCに向くなどして攻撃されなければ宝の持ち腐れだ。カバーリングや攻撃誘導系の効果を併用すれば信頼度は上がる。ダメージ軽減(あるいは攻撃力低下)の場合、味方に飛ばしたり、敵の攻撃力自体を削いだりできるので、装甲/ガードよりは役立つ機会が多い。
 一方でエネミーの攻撃力がべらぼうに高い場合などは生半可な数値だと意味がない。これに関してはもうGMの趣味が噛み合うことを祈るしかない。
 なお装甲やガード、ダメージ軽減等の防御手段はシナリオを前に進めることに直接貢献しない。守りだけを固めてもゲームはクリアできない。このため、別になくても困らないし、これだけに傾倒すると肝心の攻撃手段が疎かとなって結果的に普通に攻撃するよりも多くの被害が出ることになる。この辺りはまた別の記事で書きたい。

ドッジ(信頼度:低~中)

 めちゃくちゃに特化すればどんな攻撃でもドッジできるようになるかもしれないが……ドッジするだけでは勝てない。味方ごと守る、《朧の旋風》(EA p.132)のようなエフェクトと組み合わせる、浮いたタイタスを攻撃に回す、等の工夫がほしいところ。

反撃(信頼度:中)

 《復讐の刃》(EA p.60)や《暗黒螺旋》(EA p.29)といった反撃系エフェクトは、単に「使えれば強い」という話に帰結する。攻撃されなければ使えないという点では防御系の効果と同じだが、あちらと違ってちゃんとシナリオを前に進めることに直接貢献するので、そういう意味での有用性は高い。

判定妨害(信頼度:低~中)

 オートアクションで、あるいは命中によりシーン中(ラウンド中)継続してダイスや達成値をマイナスする効果全般。うまく判定を失敗させた場合のリターンは装甲やガードよりも大きいが、ボスはダイスの数もそれなりだろうし、やはり生半可な数字では意味がない。というかこの手のキャラクターが猛威を振るうとボスが何もせずに死んでしまうので対処法を搭載しているケースも多々あるものと思われる。そういう点では二重にGM泣かせだ。
 ちなみに《時の棺》(EA p.33)は使うとほぼ確実に効力を発揮する上に判定をしないエネミーというのも中々いないだろうから一般的な判定妨害と同じランクで語るのはナンセンス。強いて信頼度を付けるとすれば「超高」。

装甲無視/ガード不可(信頼度:低)

 ここまでくるともうピンポイントの対策札である。文脈としては「攻撃力」の仲間になるがいかんせんエネミー(GMの趣味)への依存度が高い。また相手の装甲やガード値がある程度高かったとしても「攻撃力」自体を上げて上から殴れば済む話なので、敢えてこれでなければならないという機会は非常に限られる。相手が《竜鱗》(EA p.61)LV5を持ってるとかね。
 ただしこの手の効果は何かの「ついで」に付いてくると俄然評価が変わってくる。《サイレンの魔女》(EA p.75)然り、《クリスタライズ》(EA p.85)然り。「技能:シンドローム」のエフェクトを使うための足掛けとして使う《ペネトレイト》(EA p.84)なんかも普通に有用なので、サブウェポンにはサブウェポンの使い方がある、といったところか*1

バッドステータス付与(信頼度:?)

 GMが《状態復元》(EA p.162)をエネミーに搭載するタイプの人間かどうか、ただそれだけのような気がしている。仮にあったとしてもHPを減らせるので全くの無駄というわけでもないのだが。文化圏によっては全エネミーに搭載するのがデフォルトみたいなことも耳にした。
 実際バッドステータスの内容自体も基本的には「判定妨害」とかの仲間なのでやはりエネミーの特性に大きく依存するであろう。常に役立つのは「邪毒」くらいかな。

その他

 《マシラのごとく》(EA p.77)や《リミットリリース》(EA p.78)といったシナリオ一発の大技は、攻撃力という観点からすれば信頼度が高いが、ダメージ無効等の防御側の大技を合わせられると悲しいことになるリスクが常に伴う。

 また、相手に依存しない、使えば確実に効力を発揮するタイプの効果もある。先に出た《時の棺》もそうだし、《時間凍結》(EA p.33)《ライトスピード》(EA p.77)のような能動的に使える複数回行動も基本的に使えば使うほど強い。これらの場合、エネミーというよりはPT全体の侵蝕率増加バランスとの兼ね合いを考える必要がある。

総評

 このダブルクロス相対性理論という概念を一度示しておくと今後様々な考察ないしキャラクターシートの記事を書くにあたって便利かなと思って書いた。普通にダブルクロスをプレイするにあたって考える必要はないことなので、どうでもいい人は気にしなくていいと思います。

*1:とは言ったものの、このケースだと相手が装甲を持っていないと分かったとしても《ペネトレイト》を使わなければならなくなる。それはそれでどうなんだ。