ダブルクロス:アイテム検証・武器編(「他の武器は装備できない」)

 いろいろ書いていますが、ほぼ誤植みたいな不具合ばっかりなんでGMによってやんわり雑に認めてもいいと思います。

基本情報

  • ダブルクロス The 3rd Edition』では、ひとりのキャラクターにつき2つまで武器を装備することができる(R1 p.175)。
    • 単なる仕様であり特に設定が明言されているわけでもないが、「両手剣」(R2 p.185)だと1つしか装備できないことを鑑みるに、片方の手にそれぞれ1つずつ装備することを表しているものと思われる。
    • ただしダブルクロス世界において2つの武器を同時に扱えるのは一部の天才(ノイマン)かそれに準ずる者のみなので、《マルチウェポン》(EA p.93)等の特殊なエフェクトを使う以外は、片手に武器、もう片手に盾を持った勇者スタイルのキャラクターくらいしかこのルールの世話になることはない。
  • 一部の武器には、先述の「両手剣」のように「この武器を装備している間、他の武器は装備できない」という効果を持っているものが存在する。設定上大型の武器や弓系のアイテムの一部がこれに該当する*1ことから、これは「扱うのに両手が必要であるため、他の武器が使えない」ことを表現しているものと判断できる。

表記ブレの悲劇

 「この武器を装備している間、他の武器は装備できない」と効果にある武器(以下「両手持ち」と表記。)を参照する効果がいくつか存在する。《パワーアーム》(EA p.60)や《超軽量化》(EA p.84)など。で、この効果テキストの記述が非常に問題。何が問題って表記を明確に示してしまっているため、厳密に処理しようと思った場合、このテキストから少しでも外れると効果が適用されないことになるのである。
 例えば「レイジングブレイド」(LM p.118)は「この武器を装備している間、他の武器は装備できず、あなたの【行動値】を-4する。」とある。大剣のアイテムであり設定上両手持ちであることに違いはないのだろうが、テキストが一言一句一致していないと対象にならないため、残念ながら《パワーアーム》を使っても「レイジングブレイド」二刀流はかなわない。他にも「大槌」(IC p.79)や「レッドテンペスト」(HR p.87)、「ストームワインダー」(HR p.87)、「フォールンガトリング」(HR p.90)など複数の効果をあわせもつが故にテキストをひとまとめにされてしまった武器がこれに該当する。似たような効果の「トツカ」(PE p.38)はきっちり分けて書いてある(対象になる)のに……*2
 さて、ここで更に悲しいお知らせがある。「フォールンマシン」(HR p.90)というヴィークルは《パワーアーム》と似たような効果を持つ、持つのだが……テキストが違う。

搭乗している間、“この武器を装備している間、他の武器を装備できない”とある武器を最大4つまで装備できる。
『ヒューマンリレーション』p.90

 「他の武器“を”装備できない」と書いてある武器、ざっと探したら「バラキエル」(HR p.92)と「デバウラー」(HR p.96)、「ミリオンベイン」(HR p.97)がそうだった。じゃあ『ヒューマンリレーション』でのみ表記ブレが発生しているのかと思いきや「混沌なる者の槍」(HR p.86)は従来の「他の武器“は”」表記。なんなんだよ!FHにしか扱えないヴィークルなのか?
 この“は”と“を”についてはもう本当にあまりにもしょうもないので誤植であるとして処理していいと思う。じゃないとただでさえ用途が限定的な「フォールンマシン」がさらに使いづらくなってしまう。

「他の」ってどこまでが他なのか問題

 武器を両手持ちにする効果のエフェクトもある。モルフェウスの《ジャイアントウェポン》(HR p.81)とエグザイルの《死招きの爪》(BC p.61)がそうだ。うち前者は明確に両手持ちのテキストを追加するという効果なので、問題なく《パワーアーム》で踏み倒すことができる。じゃあ《死招きの爪》は?

ただし、このシーンの間あなたは他の武器を装備できなくなる。
『バッドシティ』p.61

 ここで問題なのは《パワーアーム》使えないじゃんという点ではない。「他の武器」ってどこまで他の武器なんだ?という点である。先程から何度か言及しているが、両手持ち武器は「重いので」とか「両手で操作するので」みたいな意味合いで「他の武器を装備できなく」なっている。だから「他の」とはその武器を単一の個々のものとして考え、「両手剣2つなら『他の武器』じゃないから二刀流できる」とはならないとするのが設定的にもデータ的にも理に適った考えである*3
 では《死招きの爪》で言うところの「他の」は何なのか。対象がよくわからないテキストである。「これの効果を受けた武器以外の武器」という意味合いなら、《骨の剣》(EA p.68)《骨の銃》(EA p.69)《死招きの爪》を全部組み合わせて使用した場合、テキストが素手と射撃武器の両方に及んでどちらも装備できるんじゃないのか
 これも結局のところ「両手持ち」をしっかり定義していないから起こる問題である。

「できる効果」で「できない効果」を無視するな

 これについては前に書いたので当該記事を参照いただきたい。
north-seeker.hatenablog.com
 かいつまんで言うと、効果に上下関係はないのだから「できる」と「できない」がかち合った場合普通はつじつまを合わせるため「できない」方が優先されるべきである、という話。実は効果に上下関係があったのだという解しか今のところない。

どうすればよかったのか

 ここから先は妄言である。
 つまるところ「両手持ち」テキストを効果にするんじゃなくルール化すればよかったのだ。【両手持ち】という要素を武器に付与しておいて、その中身をルールで定義する。そうすれば《パワーアーム》のテキストは「【両手持ち】を無視して装備できる」みたいにスマートになるしルーリングの上でも「ルールを効果で上書きしている」だけなのでマスタールールに反しない。複数の効果を持つ武器だって【両手持ち】【至近攻撃不可】とだけ書いてあればそれぞれを無視する効果できっちり無視できるし微妙な表記の違いに悩むこともない。
 まあ、私はプロのゲームデザイナーではないので、色々事情があるのかもしれない。要素を増やしたくないとか。

*1:「必中の弓」(HR p.91)は片手で撃てる。ボウガンか?

*2:公式の『リプレイ・クロニクル』や『春日恭二の事件簿』に登場する「アリサ・トツカ」は「トツカ」を《パワーアーム》して「イノセントブレード」(PE p.38)と一緒に《ヴァリアブルウェポン》(EA p.94)するとかいうとてつもない構築である。

*3:実際には言葉としての曖昧性を完全に排除できていないと個人的には思う。