ダブルクロス:移動と射程に関する考察

 自分の脳内の整理も兼ねている。初心者、というか初心者から色々考えて先へ進もうとしている人向けの記事です。長い。

白兵武器作成と移動エフェクト

  • 多くの白兵武器は「射程:至近」なので、離れた相手に攻撃を届かせるには「移動」か「射程の変更」が必要。
  • 武器を常備化しているかミドルフェイズで購入した場合、マイナーアクションが自由になるので、移動距離にもよるが、戦闘移動で相手にエンゲージすることができる
  • マイナーアクションで武器を作成/素手を変更するエフェクトを使用したい場合、マイナーアクションでの戦闘移動ができないので、何らかのエフェクトが別途必要となる
  • 移動が必須の場合、バッドステータスの「硬直」に弱くなる。

 例を挙げてみよう。サンプルキャラの「紅蓮の刃」はマイナーアクションで《インフィニティウェポン》を使うタイプの白兵アタッカーだ。彼はエフェクトのためにマイナーアクションを使用するので、そのままでは離れた相手に攻撃できない。よって別途攻撃を届かせる手段が必要となる。今回彼がチョイスしたのは《氷の回廊》。これにより、武器を作成しつつ、敵のいるエンゲージに移動することが可能となる。
 ここでは、移動のためだけに《氷の回廊》を取得、つまり経験点を15点分消費してしまっている。さらに武器の作成に15点。「武器を使って相手を攻撃する」行為に対して30点、これは妥当なのか?
 本当に極端な話をすると、インフィニティウェポンの攻撃力「8」であれば、<調達>に経験点を6~8点使って「両手剣」を常備化した方が(攻撃力だけで言えば)高い。おまけにマイナーアクションで武器を作成しなくても戦闘移動で相手にエンゲージできる。すると正味経験点10弱でそれらに近い効果が得られるということになる。

武器を作成するということ

 何故このタイミングでこの話題を取り上げたかというと、新しいサプリメント『バッドシティ』に素手変更や武器作成に関する追加エフェクトが多く収録されていたからなのだが、結論から言うとマイナーでわざわざ武器を作って移動エフェクト使って殴ること自体は上で言うほど悪いことじゃあない。問題はそれぞれのメリット・デメリットを理解できているかという点にある。

  • 武器作成のメリット:かっこいい*1、武器が破壊されるデメリットに強い、一部の武器には強力な派生エフェクトがある、武器が大したことない環境だとそこそこ使える、など。
  • 武器作成のデメリット:消費する経験点に対して攻撃力が(一部例外を除いて)低くなりがち、マイナーアクションを消費する、侵蝕率が増える、など。
  • 常備化武器のメリット:マイナーアクションを消費しないので移動エフェクトが不要、侵蝕率も増えない、サプリメントが豊富な環境だと非常に強力、など。
  • 常備化武器のデメリット:特にない。強いて言うなら現代日本で武器を剥き身で持ち歩いたらアレなので「ウェポンケース」とかで隠す必要があるくらい*2

 サンプルキャラに武器作成が多いのはマイナーアクションとメジャーアクションの概念を理解させるためだと思う。加えて「武器を作成する」というわかりやすくかっこいい要素はダブルクロスというゲームを端的に表していてそれ自体は大変素敵なのだが、漫然と武器を作成していてももったいないのだ。作るならしっかり考えて使いたい。
 明確に役立つ場面となるとどうしても追加サプリメント環境になってしまうが、《インフィニティウェポン》なら《咎人の剣》、《氷炎の剣》なら《地獄の氷炎》といった形で、それぞれ固有の良さをうまく引き出したいところ。

移動エフェクトと射程変更エフェクト

 移動エフェクト。マイナーアクションの概念を理解していないとなんだかよくわからないエフェクトのひとつ。私は初めてのセッションでアリアンロッドのノリで挑んだら大変なことになりました。
 射程変更エフェクトは公式リプレイに(なぜか)結構よく出てくるので馴染みのある人も多いかもしれない。爪とか*3、首とか*4、骨が*5伸びたりします。誰も腕が伸びないやんけ。

  • 《ハンティングスタイル》《氷の回廊》他マイナーで移動するエフェクト:多くのシンドロームや一般にも存在する最もオーソドックスな移動手段で、マイナーアクションで何らかのエフェクトを使用する際にセットで取得することが多い。また、エネミーとエンゲージしていても離脱できる効果を持っているものが多いため、「同じエンゲージにいるキャラクターを攻撃の対象にできない」効果を持った武器やエフェクトを使用する射撃アタッカーが保険として採用することがある。サンプルの「紅玉の瞳」とかね*6
  • 《一閃》:メジャーアクションで全力移動しながら攻撃できるハヌマーンの固有エフェクト。<白兵>技能を持っているので《コンセントレイト》と組み合わせられるのが特徴。攻撃力やダイス増加をセットアップやマイナーで賄うタイプのアタッカーにはありがたい。
  • 《伸縮腕》《かまいたち》《フレイムタン》:白兵攻撃を「射程:視界」にしてくれるエフェクト。敵に近づくのではなく攻撃それ自体を伸ばすタイプ。サンプルだと「誇りある紅」が該当する。移動をそもそもしないため、味方の射撃アタッカーやサポーターと同じエンゲージにとどまってカバー役をこなすなどの戦術が取れるほか、バッドステータスの「硬直」にも強い。役立つ機会は稀だが、敵がめちゃくちゃに離れていても届くという利点もある。ただいずれもダイスや攻撃力が減るデメリットがある点に注意。最近《シャドーテンタクルス》とかいう期待のニューフェイスが登場した。
  • その他:《空間圧縮》《スーパーダッシュ》《異形の転身》《タブレット》《影絵の兵士》《幻想の色彩》などなど。どれもクセはあるが移動や射程の延長に使えるエフェクトだ。

 これらのエフェクトは、普通に移動して攻撃できるキャラクターや、最初から射程が長いキャラクターには無用の長物である。しかし工夫次第でいくらでも価値を与えることができる。移動するのかしないのか、遠距離攻撃か近距離攻撃か、至近に攻撃できないデメリットに目をつむるか保険をかけるか……そういった駆け引きは、どこまで行っても付きまとうものだ。それがキャラ作成の醍醐味でもある。

余談:武器を作らずに殴る

 移動エフェクトに割く経験点をケチって1ラウンド目は《破壊の爪》を使わずマイナーアクションで戦闘移動し、データを変えないままの「素手」でぶん殴るみたいな構築もなくはない(2ラウンド目で《破壊の爪》を使う)。なくはないが……上級者向けだ。ダブルクロスは1回の戦闘が長引けば長引くほどPLに不利なので、基本的に最初のラウンドから持てるカードは全部使えるようにするのがベスト。1ラウンド目に使えない分の《破壊の爪》は無駄になってしまうし、素手の攻撃力減衰もデカい。むしろそれだったら素手変更エフェクトを採用しないくらいの勢いの方がまだマシとすら言える。いやそれもかなりピーキーだが。

*1:己の思い描く最強の武器作成ビジュアルを再現しよう!

*2:GMによっては特に何も言われなかったりする。でもウェポンケースからオートアクションでバシッと武器が出てくるのかっこいいよね。

*3:『リプレイ・オリジン』

*4:『カオスガーデン』

*5:『リプレイ・メビウス

*6:同じサンプルである「至高を見る者」は移動エフェクトを持っていないので敵にエンゲージされたらメジャーを消費して全力移動するしかない。